関門プロデュース研究隊 隊長 富田です!
毎年5月初めに行われる赤間神宮の「先帝祭」、行ったことありますか?

「先帝」とは、先の帝ですから本来は一つ前の天皇のことですが、下関の人にとっての先帝は、永遠にあの日壇ノ浦に沈んだ幼帝・安徳天皇。

今回は、そんな先帝祭の意外な見どころをお伝えします。

「上臈参拝」が有名ですが、超オススメは前日の安徳帝正装参拝

先帝祭といえば昔から「上臈参拝」が有名です。東京でいうと吉原の花魁道中に似た印象を受けますが、由来はまったく違います。下関の花街は元をたどれば平家の女官・・・ということで、女郎ではなく上臈(じょうろう)。そんな上臈さんたちの年に一度の先帝(つまり安徳帝)へのお参りが、昔の下関の庶民にはびっくりの華やかさだったのでしょう、いつしか人々は「お参り」を楽しみにするようになって「お祭り」になっていったわけです。
ただし、今の「上臈道中」の元になったのは江戸時代の稲荷町遊郭の参拝ということで、800年ずっと続いているわけではないようです。なので、装束も雰囲気も江戸時代風ですね。

それに比べて、ものすごく平安絵巻の時代考証にこだわっているのが、例年5月2日に行われる「安徳帝正装参拝」という儀式。平成の半ばに始まった試みですが、これが実に真剣に衣装や髪型などに向き合っていて面白い!僕的にはこっちがとにかくおススメです! 見たほうが早いので2017年の様子をご覧ください。

まず、碇知盛でおなじみの平家の総大将 平知盛(とももり)が登場。

その後、なぜか 平重盛(しげもり)と 平経盛(つねもり)が登場したあとに、主役の 安徳天皇、安徳帝の祖母 二位の尼 平時子、安徳帝の母 建礼門院 平徳子と続いて出てきます。

重盛は、ゴッドファーザー 平清盛(きよもり)の長男で、壇ノ浦よりはるか前に病死してしまう人です。経盛は笛の名手で知られる美少年 平敦盛(あつもり)の父親で確かに壇ノ浦の戦いで入水していますが、なぜこの2人がキャストされているのかは謎です。ただでさえ◎盛がいっぱい出てくるとややこしいので、ここではこの話題はスルーしておきましょう。

それより、何と言っても安徳天皇です。その御衣装と髪型。

平家物語では、二位の尼が安徳帝を抱いて海に沈む場面はこう記されています。

山鳩色の御衣(ぎよい)に鬢(びんづら)結はせ給ひて、
御涙におぼれ、小(ちひさ)う美しき御手を合せ、
先づ東に向はせ給ひて、伊勢大神宮・正八幡宮に御暇申させおはしまし、
その後西に向はせ給ひて、御念仏ありしかば、
二位殿、やがて抱き参らせて、
「波の底にも都の候ふぞ」
と慰め参らせて、千尋(ちひろ)の底にぞ沈み給ふ

山鳩色というのは、調べてみるとこの映像の衣装よりももっと濃いねずみ色に近い黄緑なのですが、大方こんな感じだったのだろうなあと思います。鬢(びんづら)とは左右に結分けたこの独特の髪型のことです。

琵琶朗読劇「波の下の都」を観て、この正装参拝を観れば、感動ひとしお!

安徳帝に続く二位の尼 時子、その後を行く建礼門院 徳子・・・まさに関門時間旅行のオリジナル琵琶朗読劇波の下の都」の主人公たちです。

800数十年前にこの赤間神宮の眼の前の海で確かに起こった「あの日」の物語を知れば、この正装参拝は非常に興味深く見えてきます。ここでちょっと、「波の下の都」の初演公演から、二位の尼が辞世の句を詠むシーンを音だけお聴かせしましょう。(2分ほど)

逆に言うと、「平家物語」を知らないとこの安徳帝正装参拝は楽しめませんね〜。だからこそ、3日の上臈道中のようにはまったく混んでおらずゆっくりと観ることができます。

壇ノ浦の海の方向から水天門をくぐって次々と登場する平家オールスターズ。最終的には安徳帝が祀られる赤間神宮本殿前で、みんなで記念写真を撮って終わります。お盆に集まった親戚一同の法事の写真のようで、これがまた何ともシュールで美しいんですよね〜。

その後レッドカーペットを通って帰っていく安徳帝や二位の尼などは、まるでアカデミー賞のハリウッドスターたちのようです。

ということで、琵琶朗読劇「波の下の都」を観てから「先帝祭」を、特に5月2日の赤間神宮先帝祭「安徳帝正装参拝」を観るのが超絶おススメ!ご予約はこちらから。

上臈道中の日に行くなら、源平船合戦が超見もの!

もちろん、上臈道中のある日は「先帝祭」のメイン日であるのは間違いありません。というより、「先帝祭」を含めて、下関全体でやっている「しものせき海峡まつり」のメイン日ですね。

赤間神宮を中心とした唐戸〜赤間の中心部はとにかく混みますので、車で来る方は少し離れたところに車を停めて歩いて回るのがおススメです。九州側から行くなら、門司港に車を置いて船で行くのもいいでしょう。

上臈道中はかなり早く行かないと赤間神宮の中に入れません。ただ、上臈道中を赤間神宮の中で観なくても、街でも十分楽しめます。それよりも、3日のイベントで最高に面白いのが「源平船合戦」です。だいたいお昼前ですが、詳細はお調べ下さい。

狭い関門海峡に、源平合戦のように1000艘とはいいませんが、かなりの数の漁船が集まり白旗と赤旗をたなびかせてぐるぐるめぐります。その中によく見れば、時代装束の武者や女官たちが乗り込んで手を振っています。いやあ、こんなことやっているんですね〜。もっとすごく有名になってもいい壮観な光景です。

こういうローカルなお祭りの報道って、下関側やもしかしたら山口県では県域放送で風物詩的なニュース報道をしているのかもしれませんが、たぶん九州側ではほとんど知られていません。僕も「関門時間旅行」で取材するまで全然知りませんでした。

これが、「関門」という一体の文化圏が、「下関市と北九州市」「山口県と福岡県」「本州と九州」とに分かれているために、報道でもガイドブックでも旅行サイトでも完全に分断されてしまっている結果なのでしょう。まあそのおかげで、こんなにA級コンテンツの宝庫である関門が、幸か不幸か割り合いゆっくり楽しめるのですけどね・・・。

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