生き恥バンザイ?
じつは、平家物語の作品の中では、あまり格好良く描かれていない人物なのです。
壇ノ浦の合戦で、平家の敗北が明白になり、次々に海に身を投げる平家の武者たちの傍で、
オロオロするだけの宗盛と息子の清宗。
二人は泳ぎが達者だったため、海をぐるぐると泳ぎまわる…
宗盛には臆病者のレッテルをはられているようなのです。
かたや、知将として知られる新中納言の平知盛(とももり)は、
「見るべきほどの事をば見つ」と覚悟を決め、潔く海底へ…。
しかも海面に体が浮かんでこないよう、鎧を2つも身にまとっての入水だったそうです。
このエピソードは、いまや人形浄瑠璃『義経千本桜』や戯曲『子午線の祀り』の名場面。
ところが、宗盛を題材にした作品というのは、あまり聞きません。これは見モノ。
そこで初演となる8月19日、「ミリカローデン那珂川」へでかけました。
会場のある福岡県の那珂川町も、じつは平家ゆかりの地なのです。
平家が都落ちした際、この地の有力豪族だった原田種直が私邸を安徳天皇の仮皇居として提供、
その場所がいまでも「安徳台」という地名として残っているのです。
開演後、まず舞台に登場したのは、黒のシャツと赤のベスト姿で登場する細身の宗盛。
『三文オペラ』チックな平家物語のようで、衣装だけでなく、呼び名ひとつとっても、現代風。
たとえば、
平宗盛は「むねちゃん」
平知盛は「ともちゃん」
平経盛にいたっては「ちゃんこれ」という愛称で呼ばれていたり(笑)
ストーリーは平家物語の原文に忠実ではあるものの、かなり大胆な演出です。
ミュージカル的な場面もあれば、観客を巻き込んでのシーンもある。
キャラクターの濃い暴れん坊の木曽義仲のパフォーマンスに、会場は笑いの渦。
めくるめく展開で、古典にまとわりつく古臭いイメージのかけらもありません。
最も印象的だったのは、やはり二位の尼に抱かれた安徳天皇が入水するシーンでした。
「あなたが宗盛だったら、どうする?」と。
壇ノ浦の合戦の現場でいよいよ公演!
脚本と演出を担当する田坂哲郎さんいわく、その地に応じた演出にするそうです。
その地が積み重ねてきた歴史を感じながらの舞台は、おそらく違ったものになる。
830年前と変わらない関門海峡の潮流を感じながら、
平家一門がクライマックスを迎えるお芝居を鑑賞するなんて…ということで、
下関公演も観にいく予定です。
会場でお会いしましょう!