関門プロデュース研究隊 隊長 富田剛史です。
偉そうなことを語る前に告白します。実は私も2008年に北九州に来てから何度も関門エリアに来ているのに、2017年まで乗ったことがありませんでした。本州と九州をたった5分で結ぶ連絡船、関門汽船の話です。初めて乗ったその日以来、3歳児が電車に取り憑かれるようにファンになっております。
今日は皆さんに、ここ最近の私の研究成果・・・関門汽船の船旅を10倍楽しむコツをお教えしましょう。
関門海峡の速さに逆らってドリフト気味に激走する海の◎◎◎・・・
関門海峡は流れが早いことで有名です。しかもその早い流れが一日に4回も方向を変えるんです。
その速さ、最も早い時には9ノットを超えます。時速でいうと17〜8キロ。自転車でガンガン漕いでいる速さやプロのマラソンランナーくらいのスピードです。想像できますか?
日本で一番早い海流は渦潮で名高い鳴門海峡で10ノットといわれますが、鳴門海峡の10ノットの範囲はごく一部です。まさに渦潮になっていくピンポイントの海流。それに比べて関門海峡の速い海流は、とにかく範囲が細く広く、その意味でもまさに激流の大河の様相で、こんな海峡は世界でも極めて稀なのではないでしょうか。
ちなみに、地元の人以外は関門海峡の地理的な向きが分からないでしょう。普通に考えれば本州と九州の間にある海峡だから、本州が東で九州が西で、その真中を南北に関門海峡が流れていると想像するかもしれませんが、実際にはそこはカギ型の地形になっていて、関門海峡の最も狭いところはざっくりいうと東西に伸びる細い海なのです。
西に流れているのか、東に流れているのか、何ノットなのかはすぐに分かります。下関の火の山の下にある潮流信号書の電光掲示板に出ているからです。門司の部崎の灯台あたりにも出てますが、一般によく見るのは下関の火の山下でしょう。
電光掲示板にはいつも「W」または「E」の文字が点滅しています。潮の向きが西か東かを表しているのですね。
そして「数字」。これは何ノットかを表します。「8」なら8ノット。
最後に矢印記号「↓」または「↑」。これはこれから落ち着いていくか、さらに激しくなるかを示します。(詳細は、こちらの海上保安庁のページ参照)
そして、関門汽船ツウのあなたの血湧き肉躍るサインは、「W」「8」「↑」でしょう。なぜか?・・・それには、こちらの図を御覧ください。これも海上保安庁のホームページに公開されている資料です。
我らが関門汽船が横切るルートは、この図の北九州の「北」の左下にある門司港乗り場からだいたい関門橋と平行して唐戸桟橋を結んでいます。つまり、潮が西へ向かう「W」の潮が最強流となる海域です。狭い関門海峡の中でも特に下関寄りに来た時に最高に潮の勢いは強く流れています。
ちなみにこの西への潮流、800年前の源平合戦で東への潮流だったのが反転し、源義経がこれにのって平家を討ったというあの潮流です。今もその日と何ら変わらず関門海峡の潮は流れを変え続けている・・・。そう思うと何とも不思議な感じがします。
さて、話を関門汽船に戻すと、とにかく速いこの潮流に負けずに進むために、関門汽船は普通の渡船では考えられないようなスピードで一気に関門海峡を走り抜けます。
しかも、潮の強いときは船は船首を斜めに傾けてドリフト気味に爆走します。それが最も激しいのが「W」「8」「↑」記号のときということです。さぁわかりましたね、出発の時に「W」と大きな数字のサインが見えたら、覚悟を決めて船首に向かいましょう!
時には、大きな船に突進するようなスリルが味わえるかもしれない
関門海峡には、多い日には1日1,000隻近い船が行き来しています。そんな中を朝から晩まで10分に一回海峡を横切っているのですから、なにしろ関門汽船はしょっちゅう大きな船と出くわすことになります。
まずはこちらをご覧ください。
原則としては、横切る船の後を回ること。しかし激しい潮流の中でそれをするのはなかなか大変です。
例えば、西向きの潮の強い時に当たったらどうでしょう? 東に向かう大型船だって、必死に潮に逆らって航行しているわけです。なので、思った以上に遅くなるかもしれない。
一方で、関門汽船は小さな船で、例えば九州の門司港から本州の下関に向かうとすれば、左(西)に必要以上に回り込んだらどんどん潮に流されかねない。そこで船長さんはそのギリギリの線を見極めて、流れに負けぬよう減速することもせず一気に走り抜けるのです。
また、大きな船がいない時の「W」西の強い潮流では、門司港を出た関門汽船はまずは関門橋に向かうかのように大きく右に進路を取るでしょう。
そして、激しい流れに乗りながら、右に首を向けたまま斜め左の唐戸桟橋に向かってドリフト気味に入っていきます。面白いですね〜。
(どんだけ関門汽船オタクなのか…)
そして、時には美しすぎる船長に会えるかもしれない
こんな男前な操縦をするのだから、船長は若い頃はけっこうなヤンチャしていた・・・なんてタイプかと思いきや、意外なほどに美しい女性船長が細腕で操縦していたりします。
当サイト「関門時間旅行」をパソコンで見ている方は、最近差し替えたトップページの映像をもうご覧になったかもしれません。
本当はこの美人船長がちらっと映るバージョンを最初から使いたかったのですが、一応関門汽船さんに許可を得てからと思って、しばし封印していたのです。それが一昨日ご挨拶に行きお許しを頂いたので、晴れて船長登場バージョンに変えました。
スマホだと出てきませんから、改めてこちらでお見せしましょう。ほんのチラッと出るだけですけどね。もっと見たい人はぜひ生でどうぞ〜。当たるかどうかは保証しかねますが、一人だけじゃなく何人も女性船長がいるということ。
いや、もちろん、船に乗るのに船長が女性だろうが男性だろうがそんなこと何の関係もありませんよ〜。まあそれはそうなのですが、なんとなく嬉しいってことあるでしょ。。。(え、ない?失礼しました〜)
あ、もちろん男性のイケメン船長さんも渋いベテランから若手までズラリと揃っていますので、関門汽船は女性も存分にお楽しみ頂けます。(え、顔は関係ない?)
もしタイムマシーンがあったらこんな感じではなかろうか
機会があればぜひ、夕暮れトワイライトの時間に関門汽船に乗って海峡を渡ることをお勧めします。
先ほどのビデオをご覧になればわかると思いますが、夕暮れ時の関門汽船のスピード感はまたひとしおです。できれば少しアルコールでも入っていれば、最高の気分で九州と本州を渡る旅が満喫できることでしょう。
本州で一杯。ひょいと船に乗って、九州で一杯。またひょいと船に乗って本州で一杯・・・。
関門名物 海峡渡り酒〜。
「スープが冷めない距離」といいますが、関門はまさに「酔いが冷めない距離」で違う時空に渡れるところが素晴らしいのです。平家が持ち込んだ平安文化が元になって、戦国時代以降は毛利のサムライとして長い歴史と独特の長州文化を築く下関と、明治以降急速に発展した近代の街、新進気鋭の気質を持つ門司との間の数百年にも及ぶギャップを飛び越えて、本州と九州という2つの島を猛スピードで行き来しながら酔っていく体験は、この関門以外にはなかなかできないのではないかと思います。
タイムマシーンがあったなら、きっとこんな感じのワープ感なのではないかと思える、そんな5分間が体験できるでしょう。
「どうせ大げさに言ってるんだろ」と思われるかもしれませんが、まぁ騙されたと思って一度体験してみてください。