12/19に上演する琵琶朗読劇 平家物語抄録「波の下の都」の作・演出も担当する、関門プロデュース研究隊 隊長 富田です。

12月1日配信メルマガで、「制作ノート」として、『波の下の都』を作った発想を記したところ、かなりの皆さんにお読みいただき反響がありました。

普通の仕事をしている方は、脚本を書いたり演出したりということはあまり無いでしょうから、コンテンツ制作の裏側が見えるのは面白いのかもしれません。

「波の下の都」は3者のLIVEセッション

メルマガで書いた話を少しだけ再掲すると、実は「ラジオドラマ」の発想で作っているということ。
また、それは、録音されたパッケージドラマではなく、3者による生の駆け引きを楽しむセッションであるということ。

舞台上に見えるキャストは、語り部である江原千花さん、琵琶と謡いの髙木青鳳さんの2名しかいませんが、実はもうひとり大きな役割を果たしているキャストがいます。「波音」です。

あの物語では、実は演目中ずーっと平家の時間を表す通奏低音のように波の音が流れています。1時間以上の長さに編集した波音を、舞台脇で音響スタッフがLIVEで大きくしたり小さくしたりしているんですね。

琵琶+歌/語り/波音が、互いに隙を見つけては突っ込み合い、時に引きあうことで、進行にLIVEなグルーブ感が出てくるというのが演出上の設計なんです。

徳子の動きが意味するものとは

さて、それでは本題。
本稿では、江原千花さんが演じている、語り部の建礼門院平徳子の動きについて書きとめたいと思います。

朗読劇とは、リーディング劇ともいう演劇ジャンルの一つです。
一般的には、演者は椅子に座るなどして動かずに演じるものが多いでしょう。

しかし、「波の下の都」では、椅子に腰掛けて読んでいた朗読者が、ときに立ち上がり、ときに舞台を動き回ります。あれはなにか?
結論からいうと、「平家一門の動き」を表しています。

普通の演劇や、ドラマ・映画などでは、役者はセリフの表す感情や状況を体でも表現するために動きますよね? 誰もがイメージする「演ずる」という動きです。

「波の下の都」でも、セリフに合わせた演技的な動きが多少はありますが、ほとんどはもっと『舞踊』的表現。お能やダンスと同じように、セリフではなく体の動きで場面や感情、状況などを表しているのです。

船でさまよい続ける平家一門

そんなわけで、12/19の舞台では、琵琶と謡いのときの徳子にもぜひご注目ください。

語っていないときにどうしているか?
ときにゆっくりと、ときに激しく、徳子は動き続けているのです。

ゆっくりした動きは、基本的に平家一門の船での移動をイメージしています。

京都からの都落ちのあと、九州の大宰府を訪ね、しかし味方が多いと思っていた太宰府でも受け入れてもらえず、結局門司の柳ヶ浦にたどり着く平家一門(※柳ヶ浦には、大分県の宇佐説もありますが、関門時間旅行では門司説をとっています)。

柳ヶ浦で徐々に体制を立て直し、再び都近くに上る平家一門。

今で言う神戸近くの一の谷の戦いで敗れ、四国の屋島に移って、ここでも戦に敗れ、最終的には壇ノ浦・・・つまり関門海峡まで追い詰められる平家一門。

その動きは常に、瀬戸内海を西へ東へと動く海上移動であったはずです。徳子のゆっくりした動きに、船に揺られる平家一門の一縷の希望や疲弊の情景が浮かんでくることでしょう。役者とともに、ダンサーでもある江原千花さんの動きにも注目してお楽しみ頂ければ幸いです。

会場でもオンラインでも観られる
12/19(日)「波の下の都」お見逃しなく!

2年半ぶりの再演です。この機会にぜひ多くの方にご覧頂きたいと思っております。
まだ間に合いますので、お申込みお待ちしております。こちらのページの下方から。

波の下の都

本来は関門に足を運んで見ていただきたいですが、オンラインでの中継(その後2週間程度のアーカイブ)もしています。機会が合えばぜひ御覧くださいませ。

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