長期化する香港のデモで精神的支柱としてスローガン化している「Be water(水になれ)」という言葉。
あのブルース・リーの言葉として、どこでも紹介されています。
元々は「上善、水の如し」という道教の教えのようですが、もしかしたら宮本武蔵の「五輪書」の影響だった可能性もあることご存知でしたか?「五輪書」はリーの愛読書だったのです。
ハーバード・ビジネス・スクールでも教科書とされたという、現代でも通用する戦術書の古典「五輪書」。宮本武蔵の言葉がどういうものだったのか、ちょっとオリジナルに触れてみましょう。
現地に行っても行かなくても楽しめる
巌流島だけのガイドブック
音声ガイドを聴きながら武蔵と小次郎に会いに行く想像旅行へ
まずはブルース・リーの名言、「Be water」の意味は?
ブルース・リー名言「Be water」には、その前段があります。
意訳しながら紹介してみましょう。
Empty your mind, be formless, shapeless – like water.
心を空にせよ。型を捨て、形をなくせ。水のようにNow you put water into a cup, it becomes the cup,
カップにそそげば、カップの形にyou put water into a bottle, it becomes the bottle,
ボトルにそそげば、ボトルの形にyou put it in a teapot, it becomes the teapot.
ポットにそそげば、ポットの形にNow water can flow or it can crash.
そして水は自在に動き、ときに破壊的な力をも持つBe water, my friend.
友よ、水になれ
ブルース・リーの武術の根本的な哲学として、リーが生涯大切にした考え方だそうです。
肉体の鍛錬のみならず、様々な東洋思想や哲学を学び、奥義を知り尽くしたリーが、自ら至った考え方でもあると思います。
それにしても、冒頭の「空」は、宮本武蔵が最後に至る兵法の境地です。
これもブルース・リーの名言として有名な
Don’t think, feel.(考えるな、感じろ。)
と呼応する名文が、宮本武蔵の「五輪書」の最後の巻「空」に書かれています。
『心意(しんい)二つの心をみがき、観見(かんけん)二つの眼を研ぎ、少しもくもりなく、まよひの雲の晴れたる所こそ、実の空(くう)としるべき也(なり)。』
こころには「心」と「意」の2つがあり、目には「観の目」と「見の目」がある・・・ということですね。感じることと考えること。いや、面白いですね〜。
さてさて、そんな宮本武蔵が「五輪書」で書いた水の話はどんなものだったのか、ご紹介しましょう。
宮本武蔵の五輪書に書かれたブルース・リーの名言に通じる「水になれ」
まず、「五輪書(ごりんのしょ)」というと、剣術の達人向けに書かれたもので素人が読んでも分からないだろう・・・と思っている人が多いと思いますが、まったくそうではありません。
例えて言うなら「基礎から学ぶ剣術の奥義A to Z」みたいな本なんですね。
構成は、「地の巻」「水の巻」「火の巻」「風の巻」「空の巻」となっていて、それぞれこんなテーマです。
- 地の巻:全体的な考え方、コンセプトマニュアル。兵法とはいったい何かを、大工さんのしごとの仕方や職人にとっての道具の在り方などを例にとって、極めて分かりやすく面白く書いてある
- 水の巻:剣術家になるための基礎マニュアル。剣のにぎり方や構え方はもちろん、立ち方や足の運び方、目線の向け方や目の開き具合、シワの寄せ方まで、そんな事まで教えるのか!?ということまで詳細に書き、その後具体論までしっかり書いてある
- 火の巻:相手に勝つための心理戦マニュアル。相手の気持ちを動揺させ、混乱させ、戦う前からいかに優位にことを進めていくか、劣勢になったらどう気持ちを切り替えるか、などがこと細かなシチュエーションをあげて書かれている
- 風の巻:他流派の研究マニュアル。他の流派でいわれていることと、武蔵の考え方の違いを細かく説明している。
- 空の巻:最後に添えられた、本当の奥義。武蔵が到達した最終地点の景色。
とにかく具体的だし、たとえ話が秀逸だし、400年前の文章とは思えないほど、機知に富み文章にヤマがあり、ぐんぐん読ませる面白さのある本で、今も世界中で読みつがれるベストセラーなのがよくわかります。
そんな「五輪書」の第一巻である「地の巻」に、五輪書全貌を概説するところがあって、そこにこう書かれています。
五ツの道を分ち 一まき一まきにして
其利を知らしめんが為に
地、 水、 火、 風、 空 として五巻に書顕す也(中略)
第二 水の巻
水を本として心も水になる也
水は方円のうつわものに随ひ
一滴と也さう海となる
水に碧潭の色有り
清き所を用ゐて一流の事を
此巻に書顕す也
意訳しますと、
五つの道を分けて、一巻一巻として、
それぞれの有効性を知らしめようと、
地、 水、 火、 風、 空 として、五巻に書きあらわす(中略)
二巻目「水の巻」(戦術編)では、
水を手本だと思って、心も水のようにしなさい水は四角い器には四角く、丸い器には丸くなり、
たった一滴からいずれは海にもなる
そして水は無色なのに青く深淵な色があるそんな水の清らかさとしなやかさを用いながら
二天一流の戦い方のことをこの巻に書きあらわす
こんな感じでしょうか。
ね〜、かなりの相似形ですよね!面白い。
現地に行っても行かなくても楽しめる
巌流島だけのガイドブック
音声ガイドを聴きながら武蔵と小次郎に会いに行く想像旅行へ
「宮本武蔵」と「燃えよドラゴン」の二本立て上演はいかが?
ブルース・リーは、五輪書を愛読しただけではなく、彼の映画作品にもいろいろ武蔵へのオマージュを取り入れているという話もあります。
「燃えよドラゴン」での、集団に二本の小剣で戦う立ち回りとか、敵のいる島に向かうのに手漕ぎの小舟で向かうシーンとか、本当かどうかは分かりませんが、確かに宮本武蔵の映画との類似点がありますよね〜。
そう思って、1954年の三船敏郎の「宮本武蔵」や、1961年の中村錦之助の「宮本武蔵」と、1973年制作の「燃えよドラゴン」とを、連続してみてみるとなかなか面白い類似点などがあるかもしれません。
単館映画館の皆さん、企画してみたらいかがでしょう?(やるときは教えてね〜。企画料くださいとかいわないから)
もとは老子の言葉だと思います
最も弱く最も強いもの
最も低い所でも泰然としている
など色々な場面で老子は水についての言葉を
残しています
コメント、ありがとうございます。
そうなのですね。「上善如水」ですか。なるほど。勉強になります!!